「地方在中で全国誌の副編集長ができるのか」をためしてみた。
地域・移住をフックにしたライフスタイルマガジン・ターンズ。
Uターン、Iターンしたひとのことを「ターンズ」と呼ぶとすれば、わたしもまさに「ターンズ」。当事者が、現場からリアルを叫んで全国売り雑誌をつくる、という非常に斬新かつ無謀なミッションを約2年ほど続けました。毎号100ページ近くを担当。うそだろ?
まず、2016年くらい。震災から5年経ち、移住は一段落。そんな頃「ターンズ」のライターとして岡山を取材していて、違和感を感じはじめます。
「移住ってそんなに素晴らしい?人口の奪い合いでは?」
(3.11から続く、都市部→田舎への移住ブームの残り香を煽るような)
地方に住んでいるからこそわかるリアルとの乖離。雑誌の宿命は時代の空気を届けること。
その違和感を率直に伝えところ「じゃあアサイさんがつくってくださいYO!」と出版元の坂本編集長(世田谷育ちのシティーボーイ)(好き)がおっしゃったわけです。副編集長としてわたしがつくれと。おいおいどんな決断力やねん。
幻想からリアルを取り戻すには「実際地方で生きているヒトに編集してもらうことがいい」って思っていたとのこと。ターンズは時代の空気をもう一度吸い直してリニューアルが求められていました。
ココホレジャパンは編プロではないし、出版元から新幹線で3時間半かかる遠隔地で全国誌をやるなんて未知すぎる。そもそも雑誌1冊まるまるうけおうなんてリソースも足りないやんけ!と完全に逃げ腰でした。
しかし、弊社の合言葉のひとつは「できない理由をつみあげない」。やれる方法を模索するのがモットーです。
そして、もうひとつ。
地方は暮らしやすくてええところですが、ひとつだけ「クリエイターへの対価が低すぎる」という不満がありました。すっごくギャラが安い。
副編集長をうけおう場合、制作費を一部預けてもらえるので、地方地域の素晴らしいライターやカメラマンに正当な賃金が渡せると思いました。
なにより、東京のなかだけで回していたお金を、東京から地域へ循環することができる。地方のイノベーションがネタなのに地方が潤わないなんてそんな世の中じゃポイズン…
雑誌を編集するだけでなく「地域でクリエイティブ業をすること」をサバイブできるんじゃないかと。
お引き受けしました「ターンズ副編集長」
仮にも出版業界に携わって十数年ですし、わかってますよ「副編集長」という中間管理職の恐ろしさは。
その重圧に耐えうるモチベーションは週刊少年ジャンプの三原則「友情・努力・勝利」に匹敵する「地方・創生・なめんなよ」です。
山積する問題から逃げず、ひとつずつ、楽しく解決していく方法を、雑誌を編集する手法に置き換え、アイデアで乗り切ってみようと思いました。地方の衰退と雑誌ばなれってどこか似てる気がしたし。
岡山にいながら、リアルな全国誌をつくるために
せっかく地域で生きて、都会とは違う文脈を知った編集者なんだから、その感覚を持ち込んで取材対象者と対峙したい。取材は、編集会議である程度ページをアウトプットをしてラフ切って取材に行きますが、実際に行ってみると、そのときの予想を越える、もっともっと地方のリアルが伝えられる事象がゴロゴロ転がっています。それをキャッチアップするのが編集のしごとなのかなと。
と、そんな偉そうなことを言ってますが、さすがに全部の取材には立ち会えません。編集部で役割分担をしつつ、わたしは表紙と第一特集の巻頭を担当。どんな場所のどんなネタでも日本中行くようにしています。
編集者がいないよ問題も、日本全国を「編集部」に見立てて、各地に編集者を立てることにしました。
北海道、鎌倉、京都、愛媛にスーパー編集者がいます。みんなちょー優秀。しかも地域愛にあふれている。ちなみにデザインは文化の坩堝・東京からお送りしています。東京も「地域」。いろんな地方のいいとこ取りです。 しかし、日本中いたるところでつくっている雑誌。もうね、Dropboxとハングアウトさえあれば火星へ移住しても雑誌つくれちゃう。
この雑誌の作りかたそのものが「新しい地域とのつながりかた」なのだな、と思います。
移住をカルチャーに位置づけたターンズの編集ができたことはとてもラッキーだったと今でも感謝でいっぱいです。
Client:第一プログレス
Art Directector:さとうたかよし
Designer:オギャー株式会社、朴 なおみ、沖悠子
photographer:日本中のスーパーフォトグラファー
Chief Editor:アサイアサミ
Editor:高橋マキ、ハタノエリ、古瀬絵里、來嶋路子、生田早紀
Writer:日本中のスーパーライター
Editional Director:浅井克俊